MAT
の経営者育成への挑戦

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地方創生の本質
地方創生の本質

現在、地方へのUターン・Jターン、しいてはIターンを促し、新しい“ひと”の流れを形成する動きが活発化してきている。この流れを持続的、かつ、より大きなものとするには、何よりも受け皿となる地方の“まち”が“ひと”を惹きつけられるだけの魅力を磨き上げていく必要がある。

単なる労働力の担い手としての雇用の量的側面の充実だけでなく、働きがい・生きがいを感じながら、そこで働きたいと思えるだけの質が伴った“しごと”を創出できるか否かが、真の魅力を形作るといえる。

“しごと”の創出には、外から企業や起業家を誘致することも有効な手立てではある。しかしながら、誘致される側の損得勘定に働きかけての誘致合戦では、誘致する側も疲弊してしまうことが懸念される。

どの地方にも、昔から地域の人々に愛され、親しまれてきた企業や基幹産業がある。そうした地域で育まれてきた企業、そしてその経営者が核となって、外部の“ひと”を交え、一緒におらがまちの産業・雇用を創造していくことで、新たな“まち”の礎が築かれると考える。

すべては“ひと”から

“まち”づくり、“しごと”づくりのすべての起点となるのは、“ひと”づくりからである。

私(谷藤)は、2000年(前職 有限責任監査法人トーマツ時代)に盛岡事務所開設メンバーとして東京から盛岡に赴任し、2010年から2015年までの5年間、仙台事務所の所長を務めていた。(2011年には福島連絡事務所を開設)
2011年3月11日、東日本大震災による甚大な被害を目の当たりにし、最初の1年は関与先への対応に注力したが、2012年9月にCEO直下の復興支援室を立ち上げた。

「持続的成長に向けた専門性に基づく支援」「自立を促す“押し付けない”支援」「被災地発 地方創生ロールモデルに資する支援」を行動指針に掲げ、地域に寄り添って多岐にわたる復興支援を行ってきた。その中で、より強烈に“ひと”づくりの重要性について共鳴した活動が、経済同友会の復興支援策「東北未来創造イニシアティブ」の取組の一つ「人材育成道場」であった。

被災地の経営者育成を通じて、創造的復興を志向し未来に向けた変革と創造へと挑戦する姿には、全国の地方創生における取組に関しての大きなヒントがあると考える。

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すべては人から
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人材育成道場
人材育成道場とは

人材育成道場の目的は、地域企業の現役経営者や後継者、または起業家をして地域の未来を拓くリーダーせしめ、育成・輩出することにある。

開講式から卒塾式までの半年間、塾生は自らの「想い・志・使命」と「目標・夢・思い描く将来の姿」への自問自答を繰り返し、それを具現化する事業構想の策定に本気で向き合い、悶絶の日々を送る。想いや目標が言霊化した卒塾式でのスピーチは、経営者として、そして地域のリーダーとして挑戦する覚悟と決意を、自社の従業員・事業パートナー・市民に語り掛けるもので、多くの聴衆の心に響き、共感され、信頼を得ている。応援し、ついていきたくなる者が現れるのである。

経営者育成塾のカリキュラム
(人材育成道場モデル)

経営者育成塾は毎期、数名~10数名の塾生から成る。塾生は、普段から同じ地域で暮らしを共にし、悶絶体験を共有するからこそ、仲間として切磋琢磨し、相互触発し合える関係性になる。

「自分はどう生きたいか?」を徹底的に見つめ直し、肚(はら)の底より沸き立つ想い・志・使命に基づく「自分の生き方」を紡ぎ出す。
自己と対峙し、自身の夢を経営者の志として自社の事業・経営と統合させる。この想いに下支えされる事業構想には、強い決意と覚悟が伴っている。確固たる信念の下、変革と創造に挑戦するリーダーの姿には、自ずと周囲から共感と信頼が寄せられ、多くのフォロワーが出現するのである。

塾生が、自分たちの家族・会社・地域の未来を切り拓かんとする大望と責任感を自ら意識し、事業構想を考え抜く、そして行動に移すプロセスはここから始まる。
事業構想を練り上げていくにあたっては、ビジネスプラン策定のセオリーを正しく理解し、活用できなければならない。そこを埋めるのが学びのセッションである。

想いを育み、事業構想を磨き上げる

塾生自ら肚(はら)落ちし、事業構想に落とし込む過程は、メンタリングを通じて支援する。
メンタリングは、ワンショットで最大効果を狙う学びのセッションとは異なり、半年近く塾生に伴走しながら働きかけていく。一般的にメンタリングとは「指示や命令によらず、対話による気づきと助言により、自発的・自立的な発達を促す方法」と定義されている。加えて、我々はメンタリングを「想いを育み、事業構想を磨き上げる」と定義している。

メンタリングでは、行動するのは本人、考えるのも決めるのも本人、これが大前提である。
メンターは、塾生の視座を高め、視野を広げ、事業構想のブラッシュアップに資する示唆を多面的な視点から与えることに徹する。考え抜いた末に判断して選択するのは塾生自身である。なぜなら、卒塾後に事業構想を具現化していくには、自立的に考えて歩み続けられる力が何よりも必要となるからである。

経営者である塾生自身の思考の幅を広げてから、本人の決意と覚悟に裏打ちされた肚(はら)決めに立ち会っていくことを重んじる。どれほど精緻に練られた事業構想であっても、本人に“やらされ感”があり、実行段階で前に進まなければ、絵に描いた餅でしかない。

一皮剥かせるメンタリング

メンターは、事あるごとに「それでいいの?」と塾生に問い掛ける。メンタリングの中では、塾生の志・使命感を形作る原体験を掘り下げ、将来像を描いてもらいながら、経営方針・戦略をバックキャストで創っていくことに拘る。これを繰り返すことで、塾生に情熱と志、構想力、行動力が、さらにはリーダーたる自覚が芽生えてくる。

メンターは、ただ寄り添えば良いという訳ではない。意図を持って追い込み、意図を持って寄りそう大変高度な伴走が求められる。メンターもまたプロフェッショナルスキル、人としての器と力量が試される。

地域一体の人材育成

メンターや講師もいわばよそ者にあたる。経営者育成塾を通じた人材育成の仕組みには、“地域”のコミットメントが不可欠になる。
メンター以上に、塾生と密にコンタクトをとっているのが、“伴走者”と呼ばれる世話人である。(市役所の方に務めていただくケースが多い)
メンタリングの最中に悩み苦しむ塾生の“変化”に絶え間なく目を配り、日々の壁打ち相手(聴き役)になりながら、メンターがカバーしきれない塾生の葛藤を間近で支えている。メンターと塾生相互の円滑なコミュニケーションを促進する橋渡し役は、現地で共にくらし、塾生の機微を把握している彼らでなければ務まらないであろう。

また、塾生間における、地域を牽引するリーダー同士としての仲間意識の醸成も、メンタリングの成否および人材育成に大きな作用をもたらす。
塾生の関係性においては、同窓の先輩・後輩にあたることは当たり前のようにあり、同じ地域の商圏でしのぎをけずってきた競合、あるいは、協力企業の経営者が共に入塾するなど、日頃も近しい距離にいることは地域経済界の特徴と言えよう。この地域固有の密接な人間関係は、外側からは見え難いビジネス上の制約となっていることが得てして多い。しかしながら、既存のローカルな競争やしがらみに力を削ぐのではなく、それぞれが新しい事業を構想し、時にかつてのライバル企業が手を結んで、地域の未来を展望し始める。それこそが、小さなコミュニティだからこそ生み出せる大きな団結力であると感じている。実際に塾生同士の叱咤激励が、メンターからの問い掛けにも勝る触媒効果をもたらす場面を、塾の中で幾度となく見てきた。

打ち合わせ
公演
集合写真
卒塾生の活躍

一人ひとりが壇上に上がって披露する卒塾式のスピーチと事業構想の発表では、塾生の目の輝きが、入塾前のそれとは本当に見違えるようである。そこには、なんとなく今までの延長線上の発想で捉えていた自社の経営の枠を超え、新たな挑戦への気概と期待に満ち溢れた地域のリーダーがいる。
半年間の塾で終わりではなく、卒塾後も自走できる“場”のエネルギーを提供できることが、最大の成果であると考える。

“ひと”づくりは、簡単に成果が見えるものではなく、中長期的な視野が必要である。だからこそ、今のうちにタネを撒いておかねばならない。

地域において、無理なく、持続性を有する人材育成の仕組みを構築するには、自治体を始め地域の民間企業などが互いに連携し、各々の知見とネットワークを活用した全面的バックアップが欠かせない。そのためには、地域の人々が、先ずは当事者意識を持って自分事として取り組むことである。その“リーダー”の熱量が、企業や自治体、地域全体を動かしていく。

指導
セミナー
セミナー風景
すべての始まりは、この地で生きる「ひと」なのであると固く信じている。

MAT
経営者育成への挑戦

地方創生の本質
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地方創生の本質

現在、地方へのUターン・Jターン、しいてはIターンを促し、新しい“ひと”の流れを形成する動きが活発化してきている。この流れを持続的、かつ、より大きなものとするには、何よりも受け皿となる地方の“まち”が“ひと”を惹きつけられるだけの魅力を磨き上げていく必要がある。

単なる労働力の担い手としての雇用の量的側面の充実だけでなく、働きがい・生きがいを感じながら、そこで働きたいと思えるだけの質が伴った“しごと”を創出できるか否かが、真の魅力を形作るといえる。

“しごと”の創出には、外から企業や起業家を誘致することも有効な手立てではある。しかしながら、誘致される側の損得勘定に働きかけての誘致合戦では、誘致する側も疲弊してしまうことが懸念される。

どの地方にも、昔から地域の人々に愛され、親しまれてきた企業や基幹産業がある。そうした地域で育まれてきた企業、そしてその経営者が核となって、外部の“ひと”を交え、一緒におらがまちの産業・雇用を創造していくことで、新たな“まち”の礎が築かれると考える。

すべては“ひと”から
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すべては人から

“まち”づくり、“しごと”づくりのすべての起点となるのは、“ひと”づくりからである。

私(谷藤)は、2000年(前職 有限責任監査法人トーマツ時代)に盛岡事務所開設メンバーとして東京から盛岡に赴任し、2010年から2015年までの5年間、仙台事務所の所長を務めていた。(2011年には福島連絡事務所を開設)
2011年3月11日、東日本大震災による甚大な被害を目の当たりにし、最初の1年は関与先への対応に注力したが、2012年9月にCEO直下の復興支援室を立ち上げた。

「持続的成長に向けた専門性に基づく支援」「自立を促す“押し付けない”支援」「被災地発 地方創生ロールモデルに資する支援」を行動指針に掲げ、地域に寄り添って多岐にわたる復興支援を行ってきた。その中で、より強烈に“ひと”づくりの重要性について共鳴した活動が、経済同友会の復興支援策「東北未来創造イニシアティブ」の取組の一つ「人材育成道場」であった。

被災地の経営者育成を通じて、創造的復興を志向し未来に向けた変革と創造へと挑戦する姿には、全国の地方創生における取組に関しての大きなヒントがあると考える。

人材育成道場とは
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人材育成道場

人材育成道場の目的は、地域企業の現役経営者や後継者、または起業家をして地域の未来を拓くリーダーせしめ、育成・輩出することにある。

開講式から卒塾式までの半年間、塾生は自らの「想い・志・使命」と「目標・夢・思い描く将来の姿」への自問自答を繰り返し、それを具現化する事業構想の策定に本気で向き合い、悶絶の日々を送る。想いや目標が言霊化した卒塾式でのスピーチは、経営者として、そして地域のリーダーとして挑戦する覚悟と決意を、自社の従業員・事業パートナー・市民に語り掛けるもので、多くの聴衆の心に響き、共感され、信頼を得ている。応援し、ついていきたくなる者が現れるのである。

経営者育成塾のカリキュラム
(人材育成道場モデル)

経営者育成塾は毎期、数名~10数名の塾生から成る。塾生は、普段から同じ地域で暮らしを共にし、悶絶体験を共有するからこそ、仲間として切磋琢磨し、相互触発し合える関係性になる。

「自分はどう生きたいか?」を徹底的に見つめ直し、肚(はら)の底より沸き立つ想い・志・使命に基づく「自分の生き方」を紡ぎ出す。
自己と対峙し、自身の夢を経営者の志として自社の事業・経営と統合させる。この想いに下支えされる事業構想には、強い決意と覚悟が伴っている。確固たる信念の下、変革と創造に挑戦するリーダーの姿には、自ずと周囲から共感と信頼が寄せられ、多くのフォロワーが出現するのである。

塾生が、自分たちの家族・会社・地域の未来を切り拓かんとする大望と責任感を自ら意識し、事業構想を考え抜く、そして行動に移すプロセスはここから始まる。
事業構想を練り上げていくにあたっては、ビジネスプラン策定のセオリーを正しく理解し、活用できなければならない。そこを埋めるのが学びのセッションである。

想いを育み、事業構想を磨き上げる

塾生自ら肚(はら)落ちし、事業構想に落とし込む過程は、メンタリングを通じて支援する。
メンタリングは、ワンショットで最大効果を狙う学びのセッションとは異なり、半年近く塾生に伴走しながら働きかけていく。一般的にメンタリングとは「指示や命令によらず、対話による気づきと助言により、自発的・自立的な発達を促す方法」と定義されている。加えて、我々はメンタリングを「想いを育み、事業構想を磨き上げる」と定義している。

メンタリングでは、行動するのは本人、考えるのも決めるのも本人、これが大前提である。
メンターは、塾生の視座を高め、視野を広げ、事業構想のブラッシュアップに資する示唆を多面的な視点から与えることに徹する。考え抜いた末に判断して選択するのは塾生自身である。なぜなら、卒塾後に事業構想を具現化していくには、自立的に考えて歩み続けられる力が何よりも必要となるからである。

経営者である塾生自身の思考の幅を広げてから、本人の決意と覚悟に裏打ちされた肚(はら)決めに立ち会っていくことを重んじる。どれほど精緻に練られた事業構想であっても、本人に“やらされ感”があり、実行段階で前に進まなければ、絵に描いた餅でしかない。

一皮剥かせるメンタリング

メンターは、事あるごとに「それでいいの?」と塾生に問い掛ける。メンタリングの中では、塾生の志・使命感を形作る原体験を掘り下げ、将来像を描いてもらいながら、経営方針・戦略をバックキャストで創っていくことに拘る。これを繰り返すことで、塾生に情熱と志、構想力、行動力が、さらにはリーダーたる自覚が芽生えてくる。

メンターは、ただ寄り添えば良いという訳ではない。意図を持って追い込み、意図を持って寄りそう大変高度な伴走が求められる。メンターもまたプロフェッショナルスキル、人としての器と力量が試される。

地域一体の人材育成

メンターや講師もいわばよそ者にあたる。経営者育成塾を通じた人材育成の仕組みには、“地域”のコミットメントが不可欠になる。
メンター以上に、塾生と密にコンタクトをとっているのが、“伴走者”と呼ばれる世話人である。(市役所の方に務めていただくケースが多い)
メンタリングの最中に悩み苦しむ塾生の“変化”に絶え間なく目を配り、日々の壁打ち相手(聴き役)になりながら、メンターがカバーしきれない塾生の葛藤を間近で支えている。メンターと塾生相互の円滑なコミュニケーションを促進する橋渡し役は、現地で共にくらし、塾生の機微を把握している彼らでなければ務まらないであろう。

また、塾生間における、地域を牽引するリーダー同士としての仲間意識の醸成も、メンタリングの成否および人材育成に大きな作用をもたらす。
塾生の関係性においては、同窓の先輩・後輩にあたることは当たり前のようにあり、同じ地域の商圏でしのぎをけずってきた競合、あるいは、協力企業の経営者が共に入塾するなど、日頃も近しい距離にいることは地域経済界の特徴と言えよう。この地域固有の密接な人間関係は、外側からは見え難いビジネス上の制約となっていることが得てして多い。しかしながら、既存のローカルな競争やしがらみに力を削ぐのではなく、それぞれが新しい事業を構想し、時にかつてのライバル企業が手を結んで、地域の未来を展望し始める。それこそが、小さなコミュニティだからこそ生み出せる大きな団結力であると感じている。実際に塾生同士の叱咤激励が、メンターからの問い掛けにも勝る触媒効果をもたらす場面を、塾の中で幾度となく見てきた。

卒塾生の活躍
塾生たちの研修
塾生たちへのメンタリング
リーダー教育
塾生たちとの交流

一人ひとりが壇上に上がって披露する卒塾式のスピーチと事業構想の発表では、塾生の目の輝きが、入塾前のそれとは本当に見違えるようである。そこには、なんとなく今までの延長線上の発想で捉えていた自社の経営の枠を超え、新たな挑戦への気概と期待に満ち溢れた地域のリーダーがいる。
半年間の塾で終わりではなく、卒塾後も自走できる“場”のエネルギーを提供できることが、最大の成果であると考える。

“ひと”づくりは、簡単に成果が見えるものではなく、中長期的な視野が必要である。だからこそ、今のうちにタネを撒いておかねばならない。

地域において、無理なく、持続性を有する人材育成の仕組みを構築するには、自治体を始め地域の民間企業などが互いに連携し、各々の知見とネットワークを活用した全面的バックアップが欠かせない。そのためには、地域の人々が、先ずは当事者意識を持って自分事として取り組むことである。その“リーダー”の熱量が、企業や自治体、地域全体を動かしていく。

塾生の円陣
すべての始まりは、この地で生きる「ひと」なのであると固く信じている。